ノブレス・オブリージュはもはや時代遅れなのか?

フランスに“ノブレス・オブリージュ”という言葉があります。日本語で言うと“高貴さは義務を強制する”ということになります。すなわち高貴なひと、あるいは地位の高いひと、権力のあるひとには責務が伴う、モラルコードが嫁せられるということです。

病院内にある様々なチームにはそれぞれリーダーがいます。そしてまたチームとして意識していないような場面でもそこにはチームリーダーが存在することが数多くあります。例えば外来診療の場面では意識していなくてもその外来担当医がリーダーになっているでしょうし、心カテや外科手術の場面でも術者の先生が当然リーダーになっていると思います。その他医師だけでなくコメディカルスタッフがリーダー役を務めている場面は数多くあります。

そんなリーダーには絶大な権限がある一方で、そのチームに対する責任や義務を追っているし、そこには利他の精神が必ずなければなりません。これが高貴な人に要求される“ノブレス・オブリージュ”であるわけです。その背景にはそのチームや組織に対する“ロイヤルティ(忠誠心)”も存在するでしょう。

しかしながら、時代が変わるにつれ個人主義をはき違えた利己主義が台頭し、もはや“ノブレス・オブリージュ”は古臭い観念となりつつあり、昨今の働き方改革などもその方策を誤るとこの傾向を助長してしまう可能性があるように私には思えます。これまでの医療が献身的な医療提供者に支えれらてきたことは事実である一方で、いつまでもその献身的な姿勢にばかり頼っていたのでは医療者の精神も身体もズタズタになってしまうことも事実です。医療を守るために「働き方」と「献身的姿勢」とをどう両立させるのか、そこがこれからの医療の課題ではあると思います。

 

先日、東京大学の入学式で上野千鶴子名誉教授(富山県出身、金沢二水高校卒業)が延べた祝辞が今話題になっています。

「世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと……たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください」

東大生という日本のエリートの卵たちに投げかけられたのは、まさしく“ノブレス・オブリージュ”でした。古臭いものと思えていた“ノブレス・オブリージュ”は今も生き残っていたし、この祝辞が話題になること自体、忘れ去られようとしていたものが今この時代にも必要とされているのだということを改めて確認させてくれました。

久々に書いたブログですが、読む人によって捉え方は違うと思います。それぞれがそれぞれの“ノブレス・オブリージュ”を考えてみるきっかけになれば幸いです。

上野千鶴子

東京大学オフィシャルサイトより

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退任就任記念祝賀会

3月10日(日)、当院を経て滋賀医大教授となった浅井 徹先生の教授退任、そして新たに順天堂大学医学部教授に就任されたことを記念して大津にて祝賀会が開かれ、病院を代表して出席させていただきました。

浅井先生は当院で1994年から2001年まで約7年間心臓血管外科医として勤務、私自身は1999年から3年間一緒に仕事をさせていただきましたが、その卓越した手術技術と業績を買われて2002年滋賀医大教授となり、17年間滋賀県のみならず近畿全域そして日本全国の心臓大血管疾患患者の手術治療を行い、また若き外科医の育成にも取り組んで来られました。

最後の挨拶では、予定外の志半ばでの退任でもあったため医局員に対する想いで言葉が詰まるところもありましたが、自分はエリートでもなんでもない、常に謙虚に、そして様々な困難があって転んでもただでは起きず、後ろを振り向くことなく進んできたという彼の信念が語られ、胸が熱くなりました。

当院にもこれまで度々手術のため来院していただきお世話になったことはもとより、医師派遣においても並々ならぬご恩を頂きましたことを厚く お礼申し上げますとともに、今後の益々のご活躍を祈念しております。きっと東京でもっと大きな花を咲かせられることと思います。

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富山での講演会

3年前に中学時代の同級生から講演依頼を受け心臓病についての講演を行ったことがありましたが、今回同じ研修会で再度講演依頼を受け、昨日3月6日(水)関西電力北陸支社様で講演させていただきました。今回の講演内容は心不全について。“心不全”って言っても話す内容は多岐にわたるのでちょっと理解しづらかったかもしれませんが、参加者は皆さん会社の経営者や管理職の方々ばかりのせいか、健康や病気の話に関しては自分だけでなく会社全体のことも考えてとても意識が高いと感じました。企業も健康管理には力を入れていることを実感するとともに、少子高齢化社会、人手不足の中で健康度外視で企業存続を考えることは厳しい時代になってきたなと企業の方も肌で感じているのだと思いました。

医療関係者に対するいつもの講演会の時よりも熱心に様々な質問をいただき、講演会終了後の懇親会では病気に関する話題だけでなく電力業界の今の問題点や今後の継承問題などさまざまなお話も聞かせていただきました。

単に自分自身にとっての損得勘定だけで動くのではなく、今回のような啓蒙活動や情報交換をしたりしながら時代の流れを感じ取ることが、狭い領域で仕事をしている我々医療提供者側には必要で大事なことだと思います。

最近色々と気持ちに余裕がないけれど講演を引き受けてつくづく良かったと思いました。

富山講演会

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病院が消える

「病院が消える」といういささかショッキングなタイトルの特集を張っている週刊誌を購入して読んでみた。

病院数が過剰な日本では自治体病院の9割、医療法人の3割が赤字。今後は日本の人口減、医師不足に加え、働き方改革がさらに病院経営の困難さに拍車をかけ、このままでは共倒れになるしかない。病院が淘汰される時代はもう始まっているというもの。

この金沢市近郊は全国でも指折りの病院過剰地区。本来急性期医療を担うとしている公的病院が急性期病棟を地域包括ケア病棟に移行させ病床数を維持していることは、公的病院の病床数維持だけのために税金を投入していることになるだけでなく、効率的に運営を行っている民間病院が担える分野を公的病院が奪っていることにほかならない。病床過剰で今後も高齢化、人口減、医師不足が進行するのであれば公的病院は潔く急性期病床数を減らすべきではないか。自然淘汰を待つのでなく行政が主導すべきか、各病院間での話し合いで解決すべきなのかは小生ごときが口を出すことではないかもしれないが、地域医療を存続させるためにも共倒れになって「病院が消える」ことだけは避けなければならないし、そのことを真剣に考えるべき時はとっくに来ているのだと思う。

同じ記事の中で、全国の医療法人売上高上位50法人が掲載されていた。その中でわが医療法人社団浅ノ川はなんと26位にランクイン。全国の有名医療法人が列記されている中で26位とはすごい。自己資本比率こそ低いが利益率はこの50法人の中でもかなり高い。過当競争にある金沢市内でよく健闘していると思う。そんなビッグな医療法人の中で「夢のある医療の仕事」をしたいと思うし、そうできるよう自分自身行動しなければならないがそう簡単ではない。差し当たって目の前の業績に一喜一憂する毎日ばかり。これも病院過剰状態がなくなればすっきりとした気持ちで遠い先を見据えて毎日の仕事に取り組めるのだが・・・。

 

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週刊 東洋経済 2/9号より

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TAVI 1例目!

昨日1月15日、高度大動脈弁狭窄症に対する当院で第1例目のTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)が行われました。

著名な先生のご指導の下、2時間足らずで無事成功裏に治療を終えることができました。

ご指導いただいたS先生、そして関係者の方々に深く感謝申し上げます。

患者さんも術後の経過は良好でお元気です。今更ながらTAVIの威力に驚きです。

今回は第1例目ということもあって2時間近くかかっていますが、今後症例を積み重ねればもっとスムーズに治療ができると思います。

ガチガチになって開かなくなった大動脈弁の中に、わずかな時間でかつ低侵襲に新たな大動脈弁を留置できるようになったことは高齢の患者さんにとってはこの上ない福音です。

私が医者になりたての頃には高齢者の方の大動脈弁狭窄症なんて殆どみかけませんでしたが、最近は80歳を過ぎた患者さんで胸部症状を訴えて来られる方にエコーを当てるとかなりの高率でこの大動脈弁狭窄症が見つかります。

当院は大きな総合病院とは異なり、循環器疾患に特化した専門病院ですので小回りがきき診断治療のプロセスやチーム医療が極めてスムーズです。さらに療養型病床を兼ね備えており高齢者の方への対応がシームレスに可能となっています。

高齢者の方で胸部症状(息切れや胸部圧迫感など)のある方、あるいは弁膜症と診断された方は、まずは気軽に当院を受診してみてください。

 

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今年のキーワードは“Team”

明けましておめでとうございます。
年末12月29日、市内ホテルで恒例の病院忘年会が行われました。150名以上の参加者があり盛り上がる会となりました。

冒頭、2019年のキーワードは“Team”であることをプレゼン。
すでに当院の中では多くのTeamが形成されそれぞれの活動が行われていますが、真に機能しているのか、期待されるアウトカムを達成できているのか、自らが客観的に評価する必要があります。
各職種間のアプローチの違いや信念対立の存在を意識しあいながら、患者さんの命を守るためにいつでも誰にでも意見を言えるチームになっているかどうか、胸に手を当てて振り返ってみる必要があると思います。
オーケストラという病院組織の中で各TeamがJazz bandとして機能するよう、Teamリーダーだけでなく全メンバーがミッションを共有し分業と連携を進めてゆく、そんな1年にしたいと思います。
jazz band
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医療の改善活動発表会2018

今年も医療の改善活動発表会が2回に分けて行われ、院内のさまざまな部署から全部で20演題の発表がありました。

院内では医療の質・価値改善へ向けてのさまざまな取り組みが行われており、その全てがここで発表されるわけではありません。

中にはこの取り組みは発表に値するものだと思われても、発表の場を持つことなく地道に素晴らしい成果を上げている活動もあります。

「この病院は診察に訪れるたびに何か必ず新しい取り組みが行われている」と言ってくれる患者さんがいます。

これは医療の改善へ向けての病院の組織文化が出来上がりつつあることを示しているのだと思っています。

発表しなくても改善へ向けて頑張っているスタッフたちにも感謝です。

さて、今回の医療改善活動発表会に対する個人的感想です。

短期間にPDCAサイクルを回し成果を上げているものもあれば、まだ取り組みを始めたばかりの中間報告的発表もあり、レベルはさまざまです。

しかしどのような発表でも自分たちの活動を他部署のスタッフにも理解してもらえないと意味がないし、伝えたいことが伝わるプレゼンである必要があります。

いくら素晴らしい活動であっても主観的評価だけに終始する内容ではもしかすると単なる自己満足としか評価されないかもしれないし、そこには必ず科学的あるいは客観的な評価がないと活動の目的に適った成果が得られているかどうか検証しようがありません。

また部署としてさまざまな取り組みを行っているがためにそれらをすべて伝えたいという気持ちが強すぎて盛り沢山になり、折角の中心となる活動内容や意義がかえって分かりにくくなっているものも多々ありました。

目的に沿った活動内容になっているか、測定した指標は目的とする結果や結論を引き出すために適ったものになっているか、発表者側の一方的な見方でなく専門職以外のスタッフが聞いて理解できるプレゼンになっているか、最初のテーマ設定から最後のプレゼンまで考え抜かれた活動になればそれが「はずみ車」となって病院全体が動き出す活動になるのだと思います。

発表が終わったから改善活動が終わるわけではありません。それぞれの発表には必ず課題が残っていたはず。その残された課題に向けてまた今日から取り組みを始めることがPDCAサイクルを回すということです。また来年素晴らしい医療の改善活動発表会を期待しています。

2018医療の改善活動

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